人は保険を掛ける。
簡単にイメージされるのは生命保険や入院保険、火災保険やガン保険あたりだろうか。
日常でもたびたび先に保険をかける場面がある。
「このあとスタッフがおいしくいただきました。」
なんて文言は、後でテレビ局にクレームが来ないように先回りで茶の間に伝えている保険と言えるだろう。
この前は、カラオケに自信のない人が曲が始まる直前に、「俺あんまり歌うまくないんでみんな喋っててください。」と言っている場面に出くわしたばかりだ。
これも、聞いている人を不快にさせないようにする、ある種の保険だろう。
上の例が正しいかどうかはさておき、人は考えられうる最悪のリスクに対してあらかじめ保険を掛けておき、傷を出来るだけ小さくしようとするものだ。
全く保険を掛けずに生きている人なんてそうそういないはずだと思う。
もしいるのならその人は、よっぽど楽観的な性格の人か、あるいは事あるごとに損をしても学ばない人のどちらかだろう。
人は保険を掛ける。
私もそれに漏れない種類の人間だ。
トラリピを始める際、レートがいくらになったらロスカットになるかがわかるサービスをM2Jは提供している。
私の場合のロスカットは、オーストラリアドルが81.30円になった時に起こるものであるはずだった。
だからあの日。8月24日の深夜3時ごろ。
ロスカットの憂き目に合った私は、なぜロスカットが起こったのかさっぱり理解できなかった。
なぜならあの日の最安値は82.21円だったからだ。
口座残高にはまだまだ余力があったはずだった。
なのになぜ…。
私はあることに気がつく。
「保険だ…。」
トラリピのメリットは、基本的にほったらかしにしておいてもシステムが勝手に働いてくれて儲けがコツコツでることだ。
私が寝ていようが、仕事をしていようが、風呂に入っていようが、テレビをみていようが。
注意点はたったのひとつ。
口座残高の管理だ。
為替の変動により口座の維持率が低くなり、基準を下回ってしまえば、自動ロスカットが起こる。
トラリピの場合は維持率100%を下回れば自動ロスカットだ。
※維持率=時価残高÷証拠金必要額×100で算出
そうならないように、たまにレートと口座残高をチェックして、維持率が低くなっていたら追加資金を投入することによって維持率を上げる必要がある。
そもそも自動ロスカットは、ある種の「保険」である。
FXでは、あまりに損が膨らめば、投資した金額以上の損がでる。
下手を打てば自己破産だ。
そうならないように自動ロスカットが定められている。
またトラリピでは、セーフティ機能のために、自動ロスカット基準以外に、いくらになったら保有しているポジションを全て決済するか設定することができる。
言い換えれば、ストップ注文である。
これは、自動ロスカットになるほどの損をしないように、もう少しだけ損を小さくさせるための手段である。
傷を最小限に抑えるための「保険」だ。
私はその保険を掛けた。
そんな保険掛けなければ、私は市場に生き残ることができた。
維持率が低くなったとしても、夜が明けたら追加で資金を投入すればよかった。
しかし、私は保険を掛けた。
私が設定したのはオーストラリアドルが83.00円になったらすべてのポジションを決済するというものだった。
私がこの設定をしたのにはなんの根拠もない。
ここまでは下がらないだろうと、安易に設定した数値だ。
これさえなければ。
さっきまで3週間なにもしなくても利益が6,600円も出たと喜んでいたのに、私の心は沈んでいた。
当然だ。
投資での初めての失敗。
そしてその損失は13万円。
金額からすれば小さなものかもしれないが、初めの資金の3分の1を失ったのだ。
精神的なダメージは大きかった。
とはいえ、立ち止まってはいけない。
人は失敗から学ぶものだ。
もう失敗はしない。
明日から再スタートだ。
そう自分に言い聞かせ、私は次の日の仕事に備えて眠ることにした。
これが私が人生における初めての損を出し、投資の勉強として13万円を支払った、2015年8月24日の明け方5時ごろの出来事だった。